monologue : Other Stories.

Other Stories

三つめの感触 : 2/5

明くる朝、京介は一人で目が覚めた。自分が寝ている間に優子は帰ってしまったらしい。当たり前か……そう思いながらも、京介は少し彼女を恨んだ。ささいな事で揺らぐような愛情ではないと……そこまででやめる事にした。こんなの、ただのワガママじゃないか。頭は正常に働いている。手早く着替えると、京介はコンビニへと向かった。

雨上がりの朝。彼はこんな朝が大好きだった。空はよどんで、花は下を向いているというのに。それでも、乾き切らない道路と雨の匂いが好きだった。

(優子は雨が嫌いだったかな……)

昨日の事は、自分から問い詰めても、問い詰められたとしてもいい結果にはなりそうにない。だが、何としても確かめねばならないのも事実だった。こんな事は、自分の心の中だけにしまっておけるものではない。問題はどうやって確かめるか、なのだが。

(……まさか浮気してるのか、なんて問いただすワケにもいかないし)

「あれ、京介じゃないか」

ふいに後ろから声をかけられて振り向くと、そこには大学で同じサークルの、柏木という友人が立っていた。

「ああ、お前か」
「お前か、じゃないよ。何でお前、こんな所にいるんだ?」

柏木の言葉に一瞬困惑する。

「いちゃ悪いのかよ?」
「……? お前、優子さんと一緒じゃなかったのか?」
「…………?」
「ついさっきまで向こうの通りを腕組んで歩いてたろ?」
「?………!」

何か胸に込み上げて来た。柏木が次の言葉を吐く前に京介は走り出していた。

(なんだよ、それ? 何なんだよ? やっぱり、やっぱりそうなのか?)

何かをごまかす様に全力で走った。通りを一つ抜け、二つ抜ける。

(どうか、どうか彼女が見つかりません様に……)

そう祈りながら彼女を探した。

が、どうやらその祈りは届かなかった様だった。見慣れた女性の横顔が角を曲がって行った……右手は男の左手に。頭上の派手なピンクの看板が、そこが何の建物か分かり易く示していた。

京介は目頭に熱さと、胸の奥にドス黒いものが蠢くのを感じた。

To be continued

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