monologue : Same Old Story.

Same Old Story

冷たい風

「冷たい風に 吹かれても」

大きく息を吸い込んだ。

「ひとりでも僕は」

僕は嫌なことがあると、いつもこうしている。表に出て詩の朗読をするのだ。今日は特別に嫌なことがあったから、寒空の下、即興の詩を叫んでいる。

「冷たい風に 吹かれても」

もう一度息を吸い込む。

「ひとりでも僕は……」

彼女の言葉が頭の中を駆け巡った。"ごめん、もう会えない" ……なんて。ひどいじゃないか。あまりに唐突じゃないか。こぼれそうになる涙をこらえて、僕は空を見上げた。

「冷たい風に 吹かれても」

空気が冷たい。さっきより声を張り上げて、何かを打ち消すように叫んだ。

「ひとりでも僕は……!」
「ひとりじゃないから」

驚いて振り返るとそこには、優しく微笑む彼女の姿があった。そしていつのまにか、僕の目からは涙があふれ出ていた。

「ひとりじゃないから……歩けるんだ」

彼女は優しく微笑んでいた。

Fin.

Information

Copyright © 2001-2014 Isomura, All rights reserved.