monologue : Same Old Story.

Same Old Story

「ここは……?」

ふと気がつくと、僕は一本の道を歩いていた。両側に綺麗な花が咲いている。桜だろうか。どうしてこんなところにいるのかがわからないが、とにかく僕は道に迷ったようだ。こんな場所には一度も来たことがない。

「? あれは……!」

道の向こうの方から一人の人間が歩いてきた。よく見覚えのある顔。僕の親父だった。

「親父! どうしてこんなところに……?」
「お前こそ、どうしてこんなところに?」
「僕は……迷ったらしいんだ」
「そうか。まさかこんなところでお前に会うとはな」
「僕だって、道に迷って親父に会うとは思わなかった」
「…………」
「ここは綺麗なところだね。空気もうまい」
「……今すぐ帰れ。場違いだ、今のお前は」
「帰れったって、道もわからないのに」
「来た方向に戻ればいい」

そう言って親父は、もと来た方へ帰って行った。そして、少し歩いてから振り向いて言った。

「元気でやれ……親不幸だけはするな」

気がつくと、今度は真っ白い部屋にいた。どうやら病室にいるようだ。起き上がった僕を、母が泣きながら抱きしめた。

「ただいま、母さん。今、死んだ親父に会ってきたよ……元気そうだった」

Fin.

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