monologue : Same Old Story.

Same Old Story

暑い日

「今日も暑いなあ」

そう言って、彼は空を見上げた。この酷暑に肉体労働はなかなかこたえる。しかし、下っ端の労働者には休みなどもらえないだろう。それでも、彼は自分の生活に不満を持ってはいなかった。

「おい、そこ! サボるんじゃない!」

現場監督の声が響く。彼は、また荷物を運び始めることにした。

自分の存在の意義は? そう聞かれて答えられる人間がどれくらいいるだろう?

彼が足元に視線を落とすと、アリが列を作っていた。

はたらきアリ。女王のために必死で働くアリ。彼はまわりを見回した。自分と同じように、額に汗を流して働く人間。アリとどこが違うんだ?

「こら! さっさと働かないか!」

監督が怒鳴る。変な考えは捨てて、仕事に戻ろう。

「あいつら、またやってるぜ」
「女王もいないのに、何のために働くんだ? つまらない生き物だ」

小さなアリの声が、大きく響いたように聞こえた。

Fin.

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