monologue : Same Old Story.

Same Old Story

わたし

「どうしてもっと上手に笑えないの?」

鏡には私が映っている。

「あなたがもっと上手くやれば、私はこんな目にあわないわ」

私の、小さいころからの癖だ。嫌なことがあると鏡の中の私を責める。まるでそれらが、全て他人のせいであるかのように。

「あなたって、なんて魅力がないの? だから皆に……」

私は、新しいグループになじめないでいた。ここのところ毎日鏡に向かっている。何の解決にもなっていない、そう思いながら。

「もうあなたの顔なんて見たくないわ」

私は、抑え切れない憎悪を鏡にぶつけようとした。右手を振り上げて、勢いよく……右手は上がらなかった。

「ちょっと……なんなのよ?」
「お願いごとが叶うんだわ」

鏡の中の "わたし" がしゃべった。

「あなたは自分をやめたいと思った。"わたし" は自由に動きたいと思った」
「……ちょっと……"私" は……」

自分が "私" でなくなっていく気がした。"私" が何になるのかはわからないが、もう自由には動けなかった。入れ替わるのか……自由はもう彼女のものらしい。

そして彼女が鏡の前から姿を消すと、"私" の意識は薄れていった。

Fin.

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