Same Old Story
矛盾
- The Beginning of Inconsistency
- http://www.junkwork.net/stories/same/042
昔々、大陸のある国では戦争が盛んだった。そのため、武器が飛ぶように売れていた。また、それに対抗する防具も飛ぶように売れていた。
道端で、一人の行商人が商売を始めた。辺りにはすぐに人だかりができた。
「急ぎの用のない方は御覧あれ! まずはこの矛!」
そう威勢よく叫ぶと、商人は大きな矛を取り出した。
「さる高名な研ぎ師の一品、貫けぬものは何もない!」
商人はそう叫び、矛を二、三度回して見せた。
「さてお次はこの大盾!」
次はそう叫び、また随分と大きな盾を取り出した。
「こちらも高名な職人による一品! 防げぬ武器は一つとしてあらず!」
そう叫ぶと商人は、矛と盾を並べて、より一層大きな声で叫んだ。
「さあ早いもの勝ちだ! 好きな方を買ってくれ!」
すると、客の中の一人がつぶやいた。
「じゃあ、その矛でその盾を突いたらどうなるんだい」
商人は顔色ひとつ変えずに言った。
「それは両方とも買ってからお試しくだされ」
Fin.