monologue : Same Old Story.

Same Old Story

君だ

(C 組の担任と援交してたんだって)
(あの子の家、火事になったんだ)
(放火って噂もあるよ)

ホームで最前列に並ぶ僕の後ろから、女子高生の噂話が聞こえる。

(特急に飛び込んだの)
(屋上から飛び降りたんじゃなかった?)
(駅だったはずよ)

物騒なことが話のネタになる世の中だ。クラスメートか、誰かの家族が自殺でもした話だろうか?

「君だ」

突然の声に僕は振り向いた。僕の後ろに列ができていたが、誰とも目は合わない。誰かが僕に呼びかけたんじゃなかったのか?

「君だ」

また聞こえる。僕はもう一度振り向いて列を見渡したが、誰も僕を気にする様子はなかった。

そういえば、さっき噂話をしていた女子高生はどこだ?

「君だ」

次に気付いたときには、声は足元から響いていた。目をやると、僕の両足を肘から先のない手首が握っていた。そのとき、ホームに特急が走りこみ、僕の足を手首が引っぱった。そして僕の体は電車の正面に踊り出た。

そう、僕だ。

Fin.

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