monologue : Same Old Story.

Same Old Story

月夜の出来事

月の綺麗な夜のこと。見晴らしのいい切り立った丘(というより崖)沿いを、一台の 4WD が走っていた。他に動くものはひとつもなかった。

「どうしたの? こんなところで」

ひとけのないところに車を停めると、男は突然女の首を絞めた。

「……! やめ……」

女は必死に抵抗を試みたが、男の力には勝てなかった。数分も経つと彼女は静かになり、辺りには静寂が訪れた。

男は車から降り、助手席のドアを開けて女の体を引きずり出した。それからゆっくりと、慎重に崖へ近付いた。

男は崖を覗き込むようにして、下が海であることを確認した。そして勢いをつけ、女の体を放り投げた。女の体は宙を舞い、岸壁に何度か打ち付けられてから海に落ちた。男は覗き込むようにしてそれを見ていた。

しばらくして男は振り向き、自分の車に向かった。

そのとき、男にとって思いがけない事態が起こっていた。彼に向かって車が突進してきたのだ。恐らくサイドブレーキを忘れ、不運なことに停車位置は斜面だったのだろう。車は男に迫り、彼に避ける時間を与えなかった。

一瞬だった。男ごと車は崖から飛び出し、崖の下へ落ちて行った。

やがて、本当の静寂が訪れた。

月だけが全てを見ていた。

Fin.

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