monologue : Same Old Story.

Same Old Story

カゴの鳥

「……あ!」

餌を取り替えてやろうとして、カゴの鳥を逃がしてしまった。彼女が僕の誕生日にくれた鳥を。僕はとっさに捕まえようとしたが、すぐに諦めることにした。

それなりに愛着もあったが、彼女本人も一週間前にいなくなったのだから。

この頃ついてない。定期は落とすし自転車は盗まれるし、彼女は部屋を出て行った。鳥がいなくなるくらい、今さら何でもない。悲しみに暮れる僕に、電話が鳴った。

「……本当ですか!」

自転車が見つかった。……が、あまり嬉しくなかった。警察に行って、盗難届けの再確認をして、書類にサインして……。それだけで半日をつぶされ、バイトにも行けなかった。おかげでまたクビになりそうだ。

(盗られた自転車みたいに、書類で鳥も帰ってくればいいのに)

パンクした自転車を引きずりながら、僕はそんなことを考えた。警察に届けを出しても、鳥を探してはくれない。

その一週間後、僕は鳥カゴを捨てることにした。じゃまになるだけだし、彼女のことを思い出して辛いだけだろうから。

僕は、家に一番近いゴミ捨て場に向かった。

「…………!」
「久しぶり。元気だった?」

家の外には彼女が立っていた。そして、あの鳥が、電線の上から僕らをながめていた。

Fin.

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