Same Old Story
カゴの鳥
- Caged Bird
- http://www.junkwork.net/stories/same/057
「……あ!」
餌を取り替えてやろうとして、カゴの鳥を逃がしてしまった。彼女が僕の誕生日にくれた鳥を。僕はとっさに捕まえようとしたが、すぐに諦めることにした。
それなりに愛着もあったが、彼女本人も一週間前にいなくなったのだから。
この頃ついてない。定期は落とすし自転車は盗まれるし、彼女は部屋を出て行った。鳥がいなくなるくらい、今さら何でもない。悲しみに暮れる僕に、電話が鳴った。
「……本当ですか!」
自転車が見つかった。……が、あまり嬉しくなかった。警察に行って、盗難届けの再確認をして、書類にサインして……。それだけで半日をつぶされ、バイトにも行けなかった。おかげでまたクビになりそうだ。
(盗られた自転車みたいに、書類で鳥も帰ってくればいいのに)
パンクした自転車を引きずりながら、僕はそんなことを考えた。警察に届けを出しても、鳥を探してはくれない。
その一週間後、僕は鳥カゴを捨てることにした。じゃまになるだけだし、彼女のことを思い出して辛いだけだろうから。
僕は、家に一番近いゴミ捨て場に向かった。
「…………!」
「久しぶり。元気だった?」
家の外には彼女が立っていた。そして、あの鳥が、電線の上から僕らをながめていた。
Fin.