monologue : Same Old Story.

Same Old Story

殺人鬼の館

「本当にありがたい」
「こんな片田舎で夕立に遭えばお困りでしょう。今夜はごゆっくりどうぞ」

少太りの中年男の館で、僕は一晩お世話になることになった。土砂降りの雨の中で車がエンストなんか起こしたからだ。ここの主人が好意的な人間で助かった。

夜中に僕は目を覚まし、用を足しに寝室を後にした。そして、トイレの隣の、地下室への扉が開いているのに気が付いた。何か胸騒ぎを感じ、僕は地下室に足を踏み入れた。

そこで僕は、想像もしなかった光景に出くわした。

「これは……!」

昨夜の雨で地盤が緩んだのか、壁は土がむき出しの状態だった。そしてその壁から、白骨化した遺体が上半身をこちら側に乗り出していた。まるで、外の人間に何かを伝えようとするかのように。

「死体が……!」
「見てしまいましたか」

振り向くとそこに、この家の主が立っていた。

「……この館は昔から "殺人鬼の館" なんて呼ばれているようでしてね」
「殺人鬼……」
「笑い飛ばしてはみたものの……火のないところに煙はたたんようです」

彼は少しうつむいて、鼻で笑った。まるで、映画の中の大悪党が観念したときのようだった。

「誰にも見られなければよかったんですがね。警察を呼びましょう」

そしてそれだけ言うと、主は一階への階段に足をかけた。だが二、三段上ったところで彼は足を止めた。そして、上半身だけをひねって僕を見、こう言った。

「おっと……犯人は私ではありませんよ。私が住み始めたのはほんの」

彼の言葉の終わらないうちに、僕は手にした拳銃の引き金をひいた。そして、壁から飛び出した白骨をなでながら彼に言った。

「そんなことは知ってるさ。前に住んでたのは僕なんだから」

Fin.

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