monologue : Same Old Story.

Same Old Story

とめどない雨

「ひどい……!」

口元を右手で押さえ、彼女は部屋を飛び出した。僕は、煙草に火をつけた。

(悪役)

そんな言葉が、ふいに頭に浮かんだ。"悪者" ではなく、"悪役" 。僕の人生を一言で表す言葉かも知れない。

(道化師とどっちがマシだろう)

意味のないことばかり頭に浮かぶ。ショックなんて言葉で言い表すのも安っぽい気がした。雨の音がする。

(そろそろ参上したかな)

煙草の煙を吐き、窓の外に目をやった。雨の中彼女が立ちすくみ、それに傘をかざす男がいた。そして二言三言交わす仕草の後、二人は強く抱き合った。

僕はカーテンを閉めた。

(……うまくいってよかった)

煙草を灰皿に押し付ける。

(……ちくしょう……!)

胸は痛みっぱなしだった。後悔と自責の念で、今にも張り裂けそうだった。

雨は、しばらく止みそうになかった。

Fin.

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