monologue : Same Old Story.

Same Old Story

雨の日の決別

僕が到着したときには、もうそこは戦場のようだった。

「窓から外がよく見えるから」

そう言って彼女が選んだ病室も、曇り空のおかげでだいなしだった。そして、彼女の部屋は見慣れない機械で埋め尽くされていた。

「ノルアド、2 アンプルで」
「脈拍は?」

飛び交う医師たちの言葉のなか、僕は主治医の言葉を思い出していた。

「もってあと二ヶ月です」
「……そんなに」
「発見が遅すぎました。手の施し様がないんです」
「……いえ、それだけ生きられれば、きっと彼女も……」

孫の顔を見られて、もう思い残すこともない。彼女はそう言っていた。

「ナチュラルで?」
「挿管はなしです」

医師たちの言葉が響く。立ちすくむ僕の耳に、無機質な機械のアラームが鳴った。それは心臓停止を告げるものだった。

涙を流すように、雨が降り始めた。

彼女は、五十年連れ添った僕に挨拶もせずに逝ってしまった。

僕は主治医の先生に頭を下げた。空と同じように、僕の頬を涙がつたった。

Fin.

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