monologue : Same Old Story.

Same Old Story

まぶたの裏

目を閉じれば、全てが暗闇に包まれる。まぶたが、私を朝まで守ってくれる。

幼い頃、私はよく怖い話を聞きたがった。ためらう祖母を子供らしい説得で説き伏せては、毎回懲りずに眠れない夜を迎えていた。

祖母も、毎回懲りずに必ずこう言った。

「目を閉じればいいんだよ。まぶたが、朝まで守ってくれるから」

幼い私は言われた通りにまぶたを閉じ、全力で祈った。怖いことが起きませんように、そして早く朝がきますように。気がつけば眠っていて、朝が訪れていて、私は安堵した。そして祖母の言う通りにしてよかったと胸をなでおろした。

以来、私は嫌なことや辛いことがあると目を閉じる癖がついた。まぶたが朝まで守ってくれるから。だから、今もこうして……。

「容疑者、なかなか口を割らないな」
「恋愛感情の歪みですからねぇ」
「話しにくいとこか」
「でしょうね。不可効力とはいえ、男は命を落としてますから」
「しかし、なんでまた彼女はずっと目をつぶってるんだ?」

まぶたが朝まで守ってくれるから。きっと、目が覚めたら全部夢だから。

Fin.

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