monologue : Same Old Story.

Same Old Story

マニュアル

21 世紀の後半の世界では、20 世紀中にはおよそ想像もされていなかったような社会構造が出来上がっていた。

いくつかの都市では、全ての住人の生活がコンピューター管理されていた。

「今日は何をすればいいのかな?」
「認証コード確認 ― ゴルフで汗を流してください」
「昼には何を食べればいい?」
「現在の栄養状態確認 ― 野菜を複数摂取してください」
「その後は?」
「引き続き運動をしましょう」

とにかく、全てが機械まかせだった。おかげで人々の "思考能力" は完全に麻痺していた。

そしてある都市では、こんな事件が起きた。

「今日は何を?」
「認証コード確認 ― あなたは社会に不必要と判断されました」
「どうすればいい?」
「十二階から飛び降りてください」

この市民は言われた通りに飛び降りた。そして、そうしたのはこの市民だけではなかった。一日に約五百人の市民が飛び降りた。

それをモニターで見ていた政府の高官が薄笑いを浮かべて言った。

「さながら "ハメルンの笛拭き男" だな」
「しかし、本当にこんなことが許されるのでしょうか」
「仕方ないさ。人類は増えすぎてしまった」
「それでも、これは人の手で行って良いことなのですか」
「考えてみたまえ、レミングという動物のことを」
「…………」
「ネズミですら調和のために自殺するのだよ。人間がして悪いことのはずがない」

Fin.

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