monologue : Same Old Story.

Same Old Story

機械化

21 世紀も半ばになるとさまざまな施設が機械化されていった。政府の奨励もあったが、人件費の削減が一番の理由だった。しかし、すべての設備が無人化されたわけでもなかった。

「床に伏せろっ!」

昼さがりの銀行の静寂を、一人の男の叫び声が打ち砕いた。

「まだこの銀行が機械化してないとは驚いたが、俺には好都合な話だ。さあ、金を出せ!」

そう言うと男は銀行員に拳銃を向けた。女性銀行員は落ち着きはらって答えた。

「お客様の行為は刑法に反しています。すぐに投降してください」
「……てめぇどこかイカレてんのか? ちょうどいい、お前は見せしめだ!」

男が両手で拳銃を構えると、銀行員は男に駆け寄った。そして目にも止まらぬ速さで拳銃を掴むと、信じられないことにそれを握りつぶした。彼女がゆっくりと手を放したとき、それがもはや凶器の役割を果たさないことは明確だった。

彼女が男の耳元でささやいた。

「お客様、事務所で話し合いましょう」

覇気を無くした男は、抵抗することなく事務所へ向かった。やがて一般客がさわぎだすと、銀行内に音楽が流れた。すると驚いたことに誰もがさわぐのをやめ、何事もなかったかのようにもとの落ち着きを取り戻した。どうやらこの音楽には、記憶を曖昧にする効果があるらしかった。

この銀行の "唯一の" 銀行員が、小声で店長にささやいた。

「どうして機械化の事実を隠すんです?」
「簡単な話だ、機械は税金が高い」
「それくらい別に……」

店長が顔を寄せた。

「強盗がいなくなると金一封も出ないしな」

人間味のうすい店長の笑い顔を見て、銀行員は背筋がうすら寒くなる思いがした。

Fin.

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