monologue : Same Old Story.

Same Old Story

空色の空

「我が国の信念は間違いではなかったのだ。見ていただきたい、この晴れわたった空を」

工業の発展にともない、自然環境は加速的に破壊されていった。国連は加盟国の全てに産業規制を通達したが、ひとつだけそれに従わない国があった。

「灰色だった空は生まれ変わり、きれいな水色を取り戻した」

数年後に大統領は勝利宣言をした。彼の進めた政策により科学は発達し、産業のマイナス面を取り払うことに成功した。今、彼の頭上には青くきれいな空が広がっている。

「我が国の科学力は自然に勝利した!」

民衆は歓喜し、大統領を称えてやまなかった。その中の一人が、空を見上げてつぶやいた。

「……あれ、何か飛んでるのか?」
「どうした?」

彼の友人が尋ねる。

「ほらあそこ、黒色の点が見えないか?」
「本当だ、何だろう……飛行機じゃないし」
「未確認飛行物体ってやつかな?」

二人は顔を見合わせて笑った。

彼が見つけた黒い点は、空を囲ったドームの内側に張り巡らされたホログラム投影装置用の、スクリーンの隙間だった。科学はこの国をドーム状に隔離し、彼らにつくりものの空を見せることを選んだ。

そしてその外には、相も変わらず灰色の空が広がっていた。

Fin.

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