monologue : Same Old Story.

Same Old Story

特殊部隊

「3-2-2 散開、作戦を遂行せよ!」

部隊長の静かな号令で、十数人の部隊は辺り一帯に散らばった。

そこは中東のある国、大規模なテロ集団が潜伏しているといわれる国。決して裕福ではない、むしろ貧しいともいえるある村。その村に白昼突然現れたのは、テロに対して敏感になっている諸大国の連合特殊部隊だった。彼らの任務が教科書に載ることはない。

「この村は例の組織の訓練場所だ。数多くのテロリストが潜伏していると思われる」

数時間前に出された指令は、ひとつの村を丸ごと殲滅するというものだった。

「迅速な判断と行動で、祖国のために頑張ってくれ。健闘を祈る」

部隊の大将は早々に帰還したが、任務に支障はなかった。彼らの部隊は、ものの数分で村を制圧してみせた。

「……隊長!」

問題はその後だった。一か所に集められた村民に銃口を向けながら叫ぶ。

「この村には女と子供しかいません!」

隊員の一人が、困惑の表情で隊長を見た。

「作戦は殲滅だ。指令を迅速に遂行しろ」
「しかし、これは」
「忘れたのか、お前たちは祖国の未来を両肩に背負っているんだ」
「しかし……!」

戸惑う隊員の一瞬の隙に、彼に銃を突き付けられていた女が、彼に渾身の力を込めた体当たりをくらわせた。

「……! ちくしょう!」

彼の足には、深々と果物ナイフが突き刺さっていた。

「ちくしょう!」

反射的に銃口を向け、引き金を引く。破裂音が数度響き、女はあっけなくその場に倒れた。彼女に子供が駆け寄り、大声で泣いた。

「そら見ろ、こいつらはお前たちに牙を向くのだ!」
「隊長、しかし」
「祖国を守りたければ撃て! 子供とて十年もすれば大人だ、お前たちが軍を退役した頃に、お前たちの祖国と生活を脅かすようになるのだぞ!」
「しかし……!」

彼女の行動が敵対心から起きたものか、子供を守るためのものだったのか、それはもうわからなかった。ただ彼らにできることは、祖国のためと信じて引き金を引くことだけだった。

彼らの任務が教科書に載ることはない。

Fin.

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