monologue : Same Old Story.

Same Old Story

真夏の夜の夢

僕は夜中にふと目を覚ました。汗で服がはりつくように、空気が肌にまとわりつく感覚。こんな夜は、きっと彼女が現れる。

「久しぶりね」
「……やっぱりか」

いつからそこにいたのか、彼女は僕の足側に立っていた。

「やっぱりだなんて、待っててくれたのね」
「ふざけるな。僕がどれだけ君をうとましく思ってるのか、まだわからないのか?」
「私はずっと一緒にいられて幸せよ。いつでもあなたのすぐ側にいられるんだもの」

彼女は、僕の恋人だったことがあった。そう、彼女が生きていた間は。半年前に突然事故死してから、たびたび僕のところへ現れるようになった。

「僕は君がいるだけで不幸そのものだ」
「あら、つれないのね」
「早く成仏してくれ。君のおかげで、僕は家族にまで精神病あつかいされてるんだ」
「二人だけの秘密なんて素敵なことだわ」
「……聞く耳持たず、だな」
「永遠に一緒にいられるのよ、私たち」
「……ふざけるな」

彼女の超常現象的な存在より、その思考回路の方が恐ろしくてたまらない。僕は彼女を見なくてすむように、寝返りをうって布団をかぶった。隣の部屋で、母と妹が何やらぼそぼそと話しているのが聞こえる。

「母さん、兄さんの具合はどうなの?」
「今日もお医者さんに相談に行ったんだけど、首をかしげるばかりだわ」
「どうしちゃったのかしら、兄さん」
「幽霊が見えるなんて、突然そんなこと」
「第一、彼女はまだ生きてるのに」
「半年前に死んだなんて、どうしてそんな恐ろしいことを……」

Fin.

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