monologue : Same Old Story.

Same Old Story

立場

「ちょっと、あなた」

ふいに呼び止められ、おびえるように振り向く僕の姿を見て、彼女はどう思っただろう? その顔には「やっぱりだ」という感情がこもっているようにも見えた。

「あなた、今そこで何してたの?」
「いや、僕は別に、何も」

たじろぐ僕を彼女が戒めるような目でみつめる。

「嘘は良くないわね」
「…………」

何も言い返せず、僕は黙り込んだ。

「鞄の中に隠したのは、カメラか何か?」
「…………」
「黙ってたってわかってるのよ。盗撮でもしようとしてたの?」
「…………」

何も言わずにうつむいている僕を見て、まるで勝ち誇ったように彼女が語り始める。

「今回が初めてじゃないでしょう? それにあなた、毎回同じ部屋を盗撮しようとしてたでしょう」

彼女の言う通りだ。

「ただの覗き魔っていうわけじゃなさそうね。ストーカーってやつかしら」
「何を根拠に、そんなっ……!」
「だって、知ってるのよ。あなたが何度も何度もここへ現れて彼女の部屋を覗いていたのを」
「そんなこと、でたらめだ……!」

彼女は表情を変えずに続けた。

「でたらめなんかじゃないわ。ちゃんと知ってるんだから。あなたは昨日の午前には四回、昨日の午後には五回、夜中に二回、そのカメラを持ってここへ来てたわ」
「……なんでそんなこと」
「一昨日にも八回、二日前には十二回、三日前には……」
「ちょっと待てよ!なんでそんなこと知ってるんだよ!」

彼女は一瞬呆気に取られた表情を見せたが、まるでそれが当然のことであるかのような口ぶりで言った。

「決まってるじゃない、ずっと見てるからよ」

そう言うと今度は少し頬を赤らめてうつむく。僕はようやく、自分が狙われる立場にもいたことを認識した。

Fin.

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