monologue : Other Stories.

Other Stories

三つめの感触 : 4/5

そして翌日、京介は江崎の家を訪れる事にした。昨日の反応からして彼女が浮気をしているとは考えにくかったが、それでも自分の目で見たものの方が重要だった。

彼女の通っていた高校から徒歩で十五分くらいの、閑静な住宅街とでも言うのか、とにかく江崎のアパートはそんなところにあった。

(大学生の身分で大したモンだな)

と、心の中で、誰に対してでもなく悪態をついた。昨日、優子の古い友人との電話で聞き出した住所には、六部屋ほどで二階建てのまだ新しいアパートがあった。アパートと言っても京介の知り合いが住んでいるような、古いアパートのイメージとはかけ離れていた。

(大したモンだね、大学生の身分でさ)

もう一度心の中で呟くと、京介は階段を登って行った。

江崎の部屋は二階の二つめ……真ん中の部屋。スポーツが趣味なのか、それとも捨ててしまうところなのか、玄関には金属バットとサッカーボールが置きっぱなしになっている。今朝の新聞は放置されているが、とくに周辺が汚れているわけでもない。

ここまでで京介は江崎を分析するのをやめた。何も意味がない……そう思い、歩き出した。一歩一歩近づくごとに心臓が強く脈打つ。部屋の前に立って、彼は軽くため息をついた。

(……何考えてんだ、俺は。会ってどうしようってんだ? 何を聞くんだ?)

そう考えて、自分の認識に苦笑した。

(どっちにしろシラを切られたらそれまでじゃないか。どうするつもりだ?)

しばらく黙って考えた後、ゆっくりと深呼吸をした。そして、ノックをしようと右手を構えた瞬間、思ってもいない事が起こった。ドアがひとりでに……いや、向こうから開いたのだ。おそらく、順調に階段を登ってきた足音が、自分の部屋の前で止まった事を不審に思ったのだろう。ドアが動いた瞬間、京介は少し後悔した。やっぱりやめておけば……だが、そんな気持ちはすぐにかき消された。

「……優……」

最後まで言葉にはならなかった。ドアを開けたのは、京介のよく知った顔だった。

To be continued

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