monologue : Other Stories.

Other Stories

長い長い手紙 : 12/12

「あー、結局盆に帰省できなくてごめん」
「連絡もよこさないしね」
「……やっぱり怒ってる?」
「別に母さんは怒ってないわ。先方はどうだか知らないけど」
「先方?」
「お見合の先方! 相手!」
「……ああ、その話か。本当申し訳ない」
「母さんがどれほど苦労したと思ってるの?」
「そんなに怒らないでよ」
「断りの連絡もひとつよこさないから、会場まで手配して」
「会場? まさか、結婚式場の予約とか」
「何バカ言ってるのよ。お見合会場」
「ああ、今ちょっとヒヤッとしたよ」
「もったいないから母さん懐石料理食べてきちゃったわよ」
「棚からぼた餅だね」
「冗談言ってるんじゃないわよ。ああ、この子は全く」
「いいじゃないか、そんなに焦らなくても」
「いつになったら母さんを安心させてくれるのかしら」
「……だからって二十件も着信履歴残すなよ」
「音が出ないようにしてたんでしょ? 本当はもっとかけたわよ」
「保存最大件数が二十件だから、か。病院にいたんだから仕方ないだろ」
「病院? 病院で何してたの? ちょっと、怪我だったらどうして早く」
「ああ、違う、違うよ。僕じゃない。お見舞に行ってたんだよ」
「もう、お見舞なんかお見合の後でも……」
「ちょっと懐かしい友達でさ。久しぶりに会ったし」
「……もういいわ。母さん、あなたの結婚に口出しするのは諦めます」
「あれ、思ったより引き際がいいね」
「仕方ないでしょう、お見合よりお見舞の方が大事だって言うんだから」
「ああ、それは本当申し訳ない」
「……来年は、せめて帰省くらいしなさいね」
「ああ、お土産つきで帰省するかもよ」
「あら珍しい、何を持って帰ってきてくれるのかしら?」
「未来のお嫁さん」

Fin.

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