monologue : Other Stories.

Other Stories

機械の命 : 2/7

「さあ、ご対面だ」

ハジメが僕のところに顔を出してから二日後、彼の祖父は僕をカプセルの外に出した。時間は深夜二時。よくこんな時間まで作業を続けたものだ。

「すまなかったな、RD。最近のロボット業界は物騒で、チェック項目も厳しくなって」

彼は僕を RD と呼んだ。アールディというのは僕の愛称で、正式には僕は RD という名称なのだ。RD 式二足歩行ヒト型ロボット、という規約型番名。規約型番っていうのはロボット協会の規則のうちのひとつ。さっき彼が言ったチェック項目を設けてる組織だ。

「実は明日が孫の誕生日でな……。それでこんな時間に起こすことになったんだが」

彼は言い訳くさくつぶやくと、大きなあくびをひとつした。そして軽く伸びをすると、今度は僕に顔を近づけて言った。

「あの子はいろいろとわけありでな」

彼の目は充血しきっていて、少なくとも八時間以上の睡眠が必要だった。

「自分のことについて話し始めたら、何も言わず聞いてやって欲しい」

僕が黙ってうなずくと、彼は続けてこう言った。

「加えて、自分から話し始めるまでは何も聞かないでやって欲しい」

僕が電子音で応答すると、彼は慌てて僕の後頭部のスイッチを入れた。

「すまん、言語分野の機能をオフにしっぱなしだった。さっきの話はわかったな?」
「了解しました、パパ」
「パパはやめなさいパパは。お前はハジメと同年代だから、おじいちゃんと呼びなさい」
「了解しました、おじいちゃん」
「それと敬語も使いすぎないようにな、ハジメが真似するから……ワシは寝るぞ」

そう言うと彼はあくびをしながら研究室を出ていった。と思ったら、扉を出てすぐに顔だけ中に戻して僕を見た。

「今言ったことは、ハジメには内緒にしてくれな」
「了解しました、おじいちゃん」
「……プログラムレベルで命令しなかった理由も考えてくれ」
「了解しました、おじいちゃん」
「お前は普通のロボットじゃないのだから」

そう言って彼は今度こそ寝室に向かった。僕は、部屋にあった古ぼけた姿見で僕自身を見た。そこにはハジメとよく似た、幼い少年が映っていた。

To be continued

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