1. monologue
  2. Other Stories
  3. チャイルドメイカー
  4. 出会い、始まり

チャイルドメイカー

  1. 出会い、始まり
  2. セットアップ
  3. 現実的な
  4. 宅配便
  5. 助言
  6. 代償
  7. 電話の声
  8. 終わりの始まり
  9. おかしな噂
  10. 隠し事
  11. 忠告
  12. 幸せへ向けて
  13. 真相

出会い、始まり

『仮想現実の世界に、あなただけの子供を』

僕がそのソフトに目を奪われたのは、一時の気の迷いかも知れない。どう見たってそれは一昔前に流行ったタイプのゲームだったし、第一、僕のような年齢になってから遊ぶようなものでもなかった。自分の娘を育成するシミュレーションだなんて。

「でも、初めて聞くタイトルのソフトだな」

数年前までヘビーゲーマーだった僕に、聞き覚えのないゲームというのは珍しかった。寝食も忘れて没頭していた時期もあったから、いわゆるオタクというやつだったのだろう。それも結婚を機にすっかりやめてしまっていたのだが。

「まぁ時間ならあるし、久しぶりにゲームも悪くはないか」

結婚してすぐに娘が生まれて、家庭円満で幸せな日々。そんな幻想はすぐに崩れて、僕は今独りぼっちだった。妻が娘を連れて僕の元を離れていったからだ。

「秋の夜長に……ってわけでもないけど」

気晴らしに立ち寄った電気街で、偶然立ち寄った中古ゲーム専門店で、僕はこのゲームソフトに巡り会った。娘も妻もいなくなって、独りになった僕にちょうどいいじゃないか。あれもこれも質の悪い運命のせいにしてしまえば、数年前の冴えないオタクに逆戻りしたって気にすることはない。とにかく、気の紛らわせるものが欲しかった。

「ありがとうございました」

僕は深く考えることなく、そのソフトを購入していた。飽きたらやめればいい、それだけのことなのだから。そのときはまたここにでも売りに来ればいい、それだけのことなのだから。とにかく気晴らしになればいい、それだけのことなのだ。

僕はそれくらいの気持ちで、その気持ちと同じくらい軽い足取りで自宅に戻った。

To Be Continued