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  3. チャイルドメイカー
  4. 助言

チャイルドメイカー

  1. 出会い、始まり
  2. セットアップ
  3. 現実的な
  4. 宅配便
  5. 助言
  6. 代償
  7. 電話の声
  8. 終わりの始まり
  9. おかしな噂
  10. 隠し事
  11. 忠告
  12. 幸せへ向けて
  13. 真相

助言

その後、僕は三日ほどパソコンに触れなかった。正直な話、なんだか薄気味が悪くて、暇つぶしだゲームだと無邪気でいる気にはなれなかった。無邪気でいる気、っていうのも何だかおかしな話だけど。

会社の同僚の奈良崎という男に、このゲームについて何か知らないか、と聞いてみた。

「チャイルドメイカー? いつのゲームだよそれ?」
「何か知ってるのか? 何でもいいから教えてくれよ」
「どこかで聞いた覚えはあるんだけどな……何だっけ。思い出せないや」
「忘れたんじゃ仕方ないか。何か思い出したらよろしく頼む」
「ああ、きっと連絡するよ」

奈良崎も根っからのゲーム好きで、年間二十本強のゲームをプレイしている、などと豪語している。僕が結婚する前はよくゲームの話をしたのだけれど、結婚を機に僕がほとんどゲームをしなくなったものだから、久しぶりにその手の話を持ちかけられた彼は嬉しそうだった。彼の家にはここ数年のゲーム雑誌もあることだし、そのうち何か思い出すだろう。

「ただいま」

誰もいない部屋に帰り、誰もいない空間に呼びかける。出迎えてくれる人がいないことにも、もうだいぶ慣れた。でもそのときは妙に違和感を覚えて、急いで靴を脱ぎ捨てて部屋に駆け込んだ。泥棒でも入り込んだかと身構える僕の目に映ったのは、全く予測していない状況だった。

「……なんだこりゃ? いつ電源入れたんだっけ?」

覚えはないのにパソコンの電源が入っていて、例のソフトが起動されていた。そして画面にはあの青いドレスを着た "アリス" と、メッセージがひとつ。

『お帰りなさいパパ、ご飯がないからお腹空いちゃった』
「……誰だ? 誰がいじったんだ? 空き巣?……まさか」

そのとき携帯が鳴り、誰かが用事でもあるらしいことを知らせた。

「はいもしもし……ああ、奈良崎か。実は例のゲームなんだけど」
「ああ、俺もちょうどそのことで電話したんだ」

彼は何か見つけたようで、僕はとりあえず彼に情報提供を促した。

「そのゲームな、どこか大手のメーカーが秘密裏に制作してたらしいんだよ。子供のいない金持ち相手に子育ての疑似体験をさせるとかで、その会社が独自に制作した名簿か何かに登録されてた、ごく一部の人間にしか配布されなかったって話だ」
「ってことは」
「そこにあるのは流出物、ってことだな。まぁ全部噂の域を出ない話ってことも確かなんだけど」

どこか大手のメーカー? 秘密裏に制作? 僕は、今目の前で起こっていることを彼に話してみた。

「なに? そのキャラクターが、空腹を伝えるためにパソコンを勝手に起動したって?」

そう言って彼は大笑いした。僕は頭からバカ扱いされたようで面白くなくて、一方的に電話を切った。パソコンと向かい合って、"アリス" に会話を持ちかけてみる。

『パソコンを動かしたのは君かい?』
『パソコンって何? ねぇパパ、アリスお腹が空いたの』
「話なんか通じるわけないよな、ゲームなんだから」

僕は適当に食べ物を買い与えると、さっさとパソコンの電源を落としてしまった。とりあえず様子見の段階、まだ結論を出すには早い。

結論? 何の結論? 僕がこのゲームを売り払うかどうかの、だろうか。

To Be Continued