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カウントゲーム

  1. ゲーム開始
  2. 発見
  3. 68
  4. 気付いたときには
  5. 転送
  6. 消去不可
  7. 試み
  8. 悪く思わないで
  9. 救いの手
  10. 君のための努力
  11. 打開策
  12. 要求
  13. 勝利の代償
  14. 簡単なこと
  15. ゲームオーバー

68

Day 1, PM 03:56 Chapter 1: 秋田 一輝

「なぁ、今日渡辺見た?」

秋田一輝は、今日この質問を七回口にした。七回とも答えは同じだった。

「さぁ、休んでるんじゃないか?」

渡辺の友人が口を揃えてそう言うのだから、きっとそれで間違いないのだろう。特にそれについて疑いを持っているわけではないのだが。

「病人だか何だかが、深夜にメールを送信する元気があるのか?」

今朝方見つけたメールの送信時刻は、確か日付が変わった頃のものだったはずだ。丸一日大学を休む理由のある人間が、わざわざそんな夜中にあんなくだらないメールを?

「ということは、だ」

丸一日大学を休む理由、というのが、"くだらないメールを送ってしまって相手に合わせる顔がない" から。

「『気持ち悪いメールに関わって気持ちが悪いので休みます』だったりして」

ぼそりとつぶやいたその独り言を、秋田は鼻で笑った。ミステリー小説やホラー映画、合わせて年に数十本鑑賞する彼にとって、渡辺が仕掛けたチェーンメールの文面はあまりに幼稚に思えた。

「特に二通目が良くない。馬脚を現すってのはこのことだろう」

一通目のインパクトに自信がなくて、なんとか二通目で補足をしようとした試みが逆効果になったわけだ。一発目だけならそれなりに評価できるのに、後発があまりに情けなくて一発目自体がかすんでしまう、なんて、ミステリーやホラーの世界ではざらにある。

「蛇足、とも言うな」

ぼそぼそとつぶやきながら、彼は大学校舎を後にした。メール送信の犯人も休みだし、今日はさっさと帰って本人に転送して返信してやろう。そう思っていた矢先、彼のすぐ目の前を、トラックが猛烈な勢いで走り抜けた。

「危ねっ……どこ見てやがんだ!」

何事もなかったように走り去るトラックの後部をにらみ付け、二・三度つぶやく。

「練馬 33-68、練馬 33-68……コンビニにでも駐車してたら、きっと」

68?

「68? あれ、68」

何故か口にしていて引っかかる。そうか。

「今朝の数字か。割とインパクトあるんだな……今朝、何時に見たっけ」

腕時計に視線を落とし、鞄の中から時刻表を取り出す。今朝は時間ぎりぎりだったから……とつぶやきながら。

To Be Continued