1. monologue
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  3. カウントゲーム
  4. 君のための努力

カウントゲーム

  1. ゲーム開始
  2. 発見
  3. 68
  4. 気付いたときには
  5. 転送
  6. 消去不可
  7. 試み
  8. 悪く思わないで
  9. 救いの手
  10. 君のための努力
  11. 打開策
  12. 要求
  13. 勝利の代償
  14. 簡単なこと
  15. ゲームオーバー

君のための努力

Day 3, PM 4:03 Chapter 3: 菱田 優子

「じゃあ、学校終わったら菱田の家で。場所はわかってるから、先帰ってていいよ」
「私の家? 私の家に来るの?」
「だってそうだろ、ノートパソコンでもないなら。お前の家まで行かなきゃ、問題のメールを見ることも何もできないじゃないか」

彼にとっての問題はメールが見れるかどうか、であって、普段大して親しくない女の家にふらりと立ち寄ることなど、きっと何でもないことなのだろう。優子は小さくため息をつきながら、学校から家までの道をうつむき加減に歩いていた。

(何あの態度、こっちにだって事情ってものがあるのよ)
「先帰ってていいよ」
(彼氏でもない男が部屋に来るのを待つ身にもなってよ)

学校から彼女の家はそう遠くなく、頭の中で文句を三回くらいループさせる頃には、もう目と鼻の先に見えるくらいだった。家の前に立ち、玄関に正面切ってまたため息をつく。親には何と説明すればいいのだろう。

「ただいま」

勢いなく玄関の扉を開けて帰宅の挨拶をしても、家の中から返事は聞こえなかった。どうやら家族は全員留守らしい。

(良かった、それなら都合がいいわ)

靴を脱いで玄関から上がろうとしたそのとき、優子の左肩に何かがのしかかった。驚いて叫びそうになった台詞をあわてて飲み込む。言葉と一緒に勢いよく吸い込んだ空気は思いのほか冷たくて、心臓やそのあたりをひやりと冷たくしてから、今度はゆっくりと外に出ていった。

「ちょっと、勝手に上がるなんて……!……いつからそこに?」
「ついさっき。家の前で何か考え事してただろ?」

肩にのしかかったのは深田の右手だった。彼なりの挨拶のつもりだったのかも知れないが、心臓に悪いから二度とごめんだ。優子は明らかに不機嫌な顔をしている自分に気が付いて、慌てて普段通りの表情を作った。

「じゃ早速見せてくれよ」

無神経なのか慣れているのか、この際どちらでもいい。とにかく今は、あの気味の悪い数値つきメールを何とかしてくれたらいい。自分にそう言い聞かせて、優子は自分の部屋へ深田を案内した。

「狭いところですけど、どうぞ」

皮肉たっぷりの口調で小さく小さく言い放って、部屋のドアを開ける。右手でドアノブをつかんだまま、先に部屋に入ってくれ、というジェスチャーを左手で示していたが、深田はドアの前から動かなかった。

「どうかした? 早く入ってよ」
「お前、いつも PC つけっぱなしなの?」
「えっ」

深田を押しのけて、部屋の中を覗き込む。ドアから直線上に、PC が置いてある白い小さなテーブルがある。その上に乗った小型の液晶ディスプレイに、愛用の壁紙と常駐ソフトのメニュー画面。PC は、起動されたばかりのようだった。

「ちょっと、なんで」

歩み寄ってテーブルの前に座り、マウスに右手を置いて操作を始める。すると、勝手にメールソフトが起動してメッセージを表示させた。昨日の夜に届いた、数値つきの薄気味悪いメッセージ。

このゲームに残された数値は、あと 34 です。

数値は、確かに減っていた。

To Be Continued