1. monologue
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  3. カウントゲーム
  4. 簡単なこと

カウントゲーム

  1. ゲーム開始
  2. 発見
  3. 68
  4. 気付いたときには
  5. 転送
  6. 消去不可
  7. 試み
  8. 悪く思わないで
  9. 救いの手
  10. 君のための努力
  11. 打開策
  12. 要求
  13. 勝利の代償
  14. 簡単なこと
  15. ゲームオーバー

簡単なこと

Day 5, PM 4:20 Chapter 4: 深田 俊樹

「深田君」

くだらない HR を終えて家に帰る支度を整えているところへ、ふいに誰かが背後から呼びかけた。担任教師の去った教室には、これからの約束を交わす生徒たちの声が飛び交い、神妙な顔つきで交わす二人の会話もその中へ溶け込んでいた。

「菱田。何?」

ああ、彼はいつか、これと同じ受け答えをしたことがある。愛想のない彼に呆れることもなく、優子は心配そうな眼差しを投げかけ続けた。

「その、ゲーム。やっぱり、もう転送したの?」
「ああ、そのことか」

わかっていながら今気付いたような答え方。深田は、目の前の女の子に同情に似た感情を抱いた。自分に関わることでこの子は、きっと少しだけ煩い事が増えるのだろう。だからといってどうするわけでもないのだが。

「まだ、俺の手元にあるよ」
「転送してないの?」
「ちょっと興味抱いたもんでね。いろいろ調べてたんだ」
「そんなこと、もっと後になってからでもできるじゃない」
「とんでもない掘り出し物だったらどうする? 手放してからそのことに気付くなんてごめんだね」
「そんな、あれはそんなこと」

そこまで口にしたが、自分の発言が何一つ根拠のないことに気付いて優子は黙り込んだ。確かに気味の悪いものであっても、カウントが 0 にならなければ罰ゲームを受けることはないのだし、そもそも罰ゲームが何なのかすらわからない状況だ。あるいは全てただの愉快犯の仕業だとしたら、罰ゲームなんてものも存在しないのかも知れない。

「あれの仕組みはわかったの?」
「カウントが減ること?」
「うん。勝手に PC 起動することとか」
「さぁ、どうだろうな。プログラム、そこまで詳しくないから」
「じゃ、やっぱり中身が何なのかわからないんじゃない。それなのに、どうして」
「ブラックボックスだからって放り出す根拠にはならないだろ? 扱い方を間違えなければ、爆弾も地雷も勝手に爆発したりしないよ」
「そんな保障なんて」
「そりゃないさ」

荷物を詰め込んだ鞄を持ち上げ、教室の出口に向かって歩き出す。

「心配してくれるのは感謝してるよ。でも」
「でも?」
「簡単な解決法があるんだよ。ルール違反ってことなのかも知れないけれど、どうして誰も実行してみなかったのかな」
「解決法? メールを転送することが解決法じゃないの?」
「まぁ、全部終わったら教えるよ。今夜中に片が付くから」

珍しく笑顔をみせ、聞こえるか聞こえないか、くらいの小さな声でつぶやく。

「参加してスリルを味わうだけでもいい。でも、ちょっと賭けに出てみたい気分なんだ」

To Be Continued