monologue : Other Stories.

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カウントゲーム : 14/15

Day 5, PM 4:20 Chapter 4; 深田 俊樹

「深田君」

くだらない HR を終えて家に帰る支度を整えているところへ、ふいに誰かが背後から呼びかけた。担任教師の去った教室には、これからの約束を交わす生徒たちの声が飛び交い、神妙な顔つきで交わす二人の会話もその中へ溶け込んでいた。

「菱田。何?」

ああ、彼はいつか、これと同じ受け答えをしたことがある。愛想のない彼に呆れることもなく、優子は心配そうな眼差しを投げかけ続けた。

「その、ゲーム。やっぱり、もう転送したの?」
「ああ、そのことか」

わかっていながら今気付いたような答え方。深田は、目の前の女の子に同情に似た感情を抱いた。自分に関わることでこの子は、きっと少しだけ煩い事が増えるのだろう。だからといってどうするわけでもないのだが。

「まだ、俺の手元にあるよ」
「転送してないの?」
「ちょっと興味抱いたもんでね。いろいろ調べてたんだ」
「そんなこと、もっと後になってからでもできるじゃない」
「とんでもない掘り出し物だったらどうする? 手放してからそのことに気付くなんてごめんだね」
「そんな、あれはそんなこと」

そこまで口にしたが、自分の発言が何一つ根拠のないことに気付いて優子は黙り込んだ。確かに気味の悪いものであっても、カウントが 0 にならなければ罰ゲームを受けることはないのだし、そもそも罰ゲームが何なのかすらわからない状況だ。あるいは全てただの愉快犯の仕業だとしたら、罰ゲームなんてものも存在しないのかも知れない。

「あれの仕組みはわかったの?」
「カウントが減ること?」
「うん。勝手に PC 起動することとか」
「さあ、どうだろうな。プログラム、そこまで詳しくないから」
「じゃ、やっぱり中身が何なのかわからないんじゃない。それなのに、どうして」
「ブラックボックスだからって放り出す根拠にはならないだろ? 扱い方を間違えなければ、爆弾も地雷も勝手に爆発したりしないよ」
「そんな保障なんて」
「そりゃないさ」

荷物を詰め込んだ鞄を持ち上げ、教室の出口に向かって歩き出す。

「心配してくれるのは感謝してるよ。でも」
「でも?」
「簡単な解決法があるんだよ。ルール違反ってことなのかも知れないけれど、どうして誰も実行してみなかったのかな」
「解決法? メールを転送することが解決法じゃないの?」
「まあ、全部終わったら教えるよ。今夜中に片が付くから」

珍しく笑顔をみせ、聞こえるか聞こえないか、くらいの小さな声でつぶやく。

「参加してスリルを味わうだけでもいい。でも、ちょっと賭けに出てみたい気分なんだ」

To be continued

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