monologue : Same Old Story.

Same Old Story

別れ話

彼女に食べさせるつもりだったチーズバーガーは、もう完全に冷め切っていた。

「どうしていきなりそんな事になるんだよ」
「ごめんね。でも、私は私なりに真剣に考えたんだ」
「唐突すぎない? やっぱりもう少し話し合った方が」
「本当にごめん。もう、決めちゃったんだ」

彼女と初めて出会ったのは去年だった。年度が変わって同じクラスになった彼女に、ほとんど一目惚れだった。そうなった事に何の疑問も持たなかった。

(こういう事に抵抗覚えないなんて……見た目で判断していないか?)

心配は全く無用だった。彼女は想像以上に明るく活発で、優しくて皆に好かれていた。例えひいきめに見ているのだとしても、間違いなく彼女は好意を抱くに値する人だった。少なくとも、僕にとってみれば。まさか、まさかこんな事になるなんて。

「本当にごめんね」

消え入るような声で現実に引き戻される。ついに彼女の目からは涙があふれた。

「ごめん、私、何泣いてんだろうね?……ごめんね」
「もういいよ。真剣に考えたんだろう? 仕方ないよ」

空気が重い。僕には言わなければならない事があるのに。

「もう後悔はしないね?」
「……うん」
「じゃあ本当に」

一瞬言葉につまって、つばを飲み込む。

「本当に、彼とは別れるんだね?」
「うん……せっかく仲を取り持ってもらったのに、本当にごめん」
「気にするなよ、彼とは合わなかっただけ、って事なんだし」

まさかこんな事になるなんて。僕の、最大の失敗……相談役をかってでたこと。まさか取り返しがつくとは夢にも思わなかった。心の中で、非常識な歓喜の声をあげた。

(……やった!)

彼女のチーズバーガーは完全に冷め切っていた。

Fin.

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