monologue : Same Old Story.

Same Old Story

彼女がそこにいる理由

一人の女性が座っていた。暇を持て余しているようにも見えたし、まるで何かを待っているようにも見えたので、(全くの好奇心から)声をかけてみた。

「何をしてるんですか?」

いきなり話しかけられておどろいたみたいだったが、彼女はすぐに答えてくれた。

「……鳥を待ってるの。鳥をみるのが好きなのよ」
「へぇ……それはどうして?」
「さあね? 空を飛べる彼等にあこがれてるんじゃないかしら?」

次の日も彼女はそこにいた。僕はまた声をかけてみた。

「こんにちは。今日も鳥を待っているんですか?」

彼女は振り向き、少しの間僕を見て答えた。

「……違うわ、今日は猫を待ってるの。じゃれたりするのが好きなのよ」
「へぇ……それはどうして?」
「さあ? 彼等の自由で無邪気なとこが好きなのかもね」

また次の日も彼女はそこにいた。僕はまた声をかけた。

「こんにちは。今日は鳥ですか、それとも猫ですか?」

彼女はクスッと笑って答えた。

「違うの、今日は雲を待ってるの。眺めるのが好きなのよ」
「へぇ……それはどうして?」
「どうしてかしらね? 形を変え続けて……飽きさせないから、かな」

その次の日も彼女はそこにいた。僕は声をかけることにした。

「こんにちは。今日は鳥ですか? 猫ですか? それとも雲ですか?」

彼女は少しうれしそうに笑って答えた。

「全部外れね。今日はあなたを待ってたのよ。少し話をしたいと思ったの」
「……へぇ……それはまたどうして?」
「さあ、私にも分からないわ。でも、理由なんて、自分でも気がつかないうちに生まれているものなんじゃないかしら?」

もうあれから二年近く経つ。彼女をそこで見かけることはない。僕は一人家路を急ぐ……。

「あら、おかえりなさい」

そう、彼女は今ここにいる。

「今日も僕を待ってたのかい?」

なんてね。

Fin.

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