monologue : Same Old Story.

Same Old Story

雪の夜、別れ道にて

「明日の飛行機で出発するわ。……長い間の夢だったのよ」
「わかってるさ。僕よりもその夢が大事だって事も」

翌日の夜、彼女は空港にいた。身の回りの物を詰め込んだスーツケースと、大きな期待と、小さな不安と。彼と離れてしまうのは悲しかったけれど、彼女にとっては夢を追いかけて飛び立つ事の方が大事だった。そして、彼は現在の地位を捨てる事が出来なかった。

「わかってるわ。お互いの居場所が違っただけなのよ」

彼女は自分に向かってつぶやいてみた。もうすぐ二十二時をまわる。飛行機の時間まであと三十分程だ。もう一度つぶやいてみた。

「たまたま合わなかっただけ。居場所が違っただけ。よくある事だわ」

飛行機の出発時間が近づいている。そろそろゲートに向かった方が良さそうだ。その時、滑走路の方に目をやると、白い粉雪がちらついていた。彼女は、いつか二人が出会った時の事を思い出していた。あの日もこんな雪ではなかったか。

アナウンスが入った。

" 雪のためしばらく運航を見合わせます…… "

そして一時間半は過ぎた。雪は止まず、出発のめどは立ちそうになかった。日付も変わるのかとため息をついた彼女に、思わぬ客人が現れた。彼は花束を携えていた。

「どうしてここに……?」
「もしかしたら、と思って。メリークリスマス」

彼女は、自分の飛行機が十二月二十四日発である事さえも忘れていた。そして、もう日付は変わるところだった。花束を受け取ると、一瞬泣いてしまいそうになった。

「……ねぇ! やっぱり私たち」
「二人の新しい門出の祝いに。……向こうへ行っても元気で」

彼女は彼を引き止めようと考えたが、彼は振り返らなかった。

アナウンスが告げた。

" 只今より運航を再開致します…… "

彼女は顔をあげ、前へ進む決意をした。そして二人は、正反対の方向へと歩き始めた。大きな期待と、小さな不安を胸に。

Fin.

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