monologue : Same Old Story.

Same Old Story

二週間

彼の家から帰る間、彼は無言だった。

もう二年ぐらいの付き合いになるのだろうか。しかし、こんな事は初めてだった。理由なんてわかりはしないが、その空気の重さに私は耐えられなかった。……が、何度口を開きかけてもすぐに閉じてしまうのだった。閉じなければならなかった。

彼の部屋に知らない物が増えていた。二週間ぶりに会った彼からは以前とは別の香水の香りがした。私に見せる表情もどことなくよそよそしい、直感的に私はそう思った。

この二週間の間に何があったのか、考えてみても私には知る由もない。

……そう言えば、確か二週間前に、彼が私の家を訪れた事があった。そのとき私は不在だったのでそのことは後で知ったのだが、三時間も私の帰りを待ってくれていたらしい。私はどうしても外せない用事で、彼が帰った約三十分後に帰宅した。その後一度だけ電話したのだが……。

あの時の事を怒っているのだろうか。真剣に謝らなかった事を気にしてるのだろうか。

しかしこの空気は、何か別のものを示しているような気がしてならなかった。

「……ねぇ?」

彼が振り向き、じっと私を見る。彼は、私の次の言葉を待っているようだった。私は、自分自身の次の言葉が自然に出てくるのを待っていた。

がしかし、時間が過ぎていくだけだった。彼は振り向き、私の少し前を歩き出した。彼の背中がとても遠くに見えた。

私は、自分の涙の意味がよくわからずにいた。

家に帰った私を最初に迎えたのは妹だった。彼女は少しだけ笑みを浮かべて言った。

「おかえりなさい、お姉ちゃん」

私は、彼の新しい香水が、彼女と同じ物だと知っていた。

Fin.

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