monologue : Same Old Story.

Same Old Story

ハロウィンの夜に

「やったぞ、成功だ!」

長年の研究の成果が実った。私は今、世紀の大発明をしたのだ。SF 的な見地からすると、"物質転位装置" とでも言おうか。私としては "個体分子再構築装置" とでも呼びたいのだが。

まあ名前などどうでもいいことだ、早速助手にも報せてやるとしよう。私は受話器を手にした。

「ああ、君かね? 今すぐ来なさい、例の物が完成したんだ!」
「先生ですか? 今日はハロウィンだってのにそんな」
「いいから早く! そんな子供の遊びなんか放っといて!」

「先生、ハロウィンの妖精をいい加減に扱うとばちがあたりますよ」
「何を言っているんだ、君は。そんな空想上のお祭りを信じたりなんかして」
「先生の研究だって見方によれば空想の産物でしょう?」
「私は成果を示したろう? 今夜、君の名前も歴史に残るのだよ」
「……だからってハロウィンを放棄する事もないでしょうに」
「いいから手伝いなさい。残すは人体実験のみなのだ。まず私が入って、成功したら君が入りなさい。大丈夫、マウスとサルは成功してる。……何も不安要素はないのだよ」

実験は成功だった。私も彼も無事に "再構築" されたのだ!

「ついにやったぞ! これで人類はまた大きく進歩したのだ!」
「先生、あまり飲みすぎないでください」
「私の理論は間違ってはいなかった! 考えてもみたまえ君、人類は "想像できる事は叶えられる" 生き物なのだよ! 空だって飛べる、宇宙にも行ける、そして次はこれだ!」
「興奮しないでください、もう」
「ふふ、君もどうだね? ハロウィンの妖精探しでもしてみたら?」
「先生も人が悪いなあ、酔うとすぐにこれだ」

(Trick or Treat !)

「……何か言ったかね?」
「いえ、何も……先生、飲みすぎですよ」

からっぽの装置が、カタリと音を立てた。

Fin.

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