monologue : Same Old Story.

Same Old Story

よくあること

ここのところ、頭にくることが起き続けている。よくあることなのかも知れないが、どうも私には納得がいかない。我慢できることではないように思えるのだ。

「あれ? ねぇ、私の自転車知らない?」
「知らないよ。ここに停めたのかい?」
「ええ……ないわ、どこにも」
「おやおや……盗まれちゃったのかも知れないね」
「鍵はかけておいたのに……警察へ行かなきゃ」
「やめときなよ、面倒だから。よくあることでしょ?」

納得がいかない。

「頼んであったチケット、とれた?」
「……あっ、ごめん! 忘れてた」
「ええっ? 私、すごく楽しみにしてたのに」
「ごめん、何か埋め合わせするからさ。よくあることじゃない?」

納得がいかない。

どうしようもなくいらいらする。むしゃくしゃした頭を少しでもすっきりさせようと、私は散歩に出かけることにした。

五分ほど歩いた時、少し向こうから車の急ブレーキの音が響いた。何かと思ってそこに向かうと、角を曲がったところに少年が倒れていた。走り去る車の影が見え、私は直感でひき逃げだとわかった。少年は、息も絶え絶えに私に訴えかけた。

「……救急車……を……お…願い……」

少年のそばに歩み寄ると、私は笑顔を作って言った。

「諦めなさい。よくあることなのよ」

そう言って私はその場を去った。何故だか、頭はすっきりしていた。

Fin.

Information

Copyright © 2001-2014 Isomura, All rights reserved.