monologue : Same Old Story.

Same Old Story

北へ

ある国の実験室で、博士が一台の機械を前にして叫んでいた。

「ついに完成だ! 最強のロボットだ!」

その機械の中には、一台の精巧な人型ロボットが入っていた。

これは博士が一人で作り上げたもので、とんでもない性能を持っていた。どんなセキュリティもくぐり抜けるし、レーダーにも映らない。要人暗殺用ロボットだった。

「お前に指令を与える。あの国の大統領を殺すのだ」

博士は、自国と対立関係にある国の大統領の名前を言った。すると、ロボットは奇妙な音をたてて命令を受け入れた。

「さて、早速出発だ……わが国から見ると、地球のちょうど裏側のこの国だ」

ロボットはまた奇妙な音をたてた。

「お前の性能なら三時間とかからない。まっすぐ北へ飛ぶのだ」

博士がそう言うと、ロボットは窓から飛び出した。およそ一日で命令を遂行してしまうだろう。あとは寝て待ち、任務遂行後に報酬の請求をするだけだ。

ところが一週間たっても、一ヶ月たってもロボットは帰ってこない。大統領が死んだという話も聞かない。博士はイライラしてテレビをつけた。そのときちょうど、こんなスクープが報道された。

北極点で謎の氷漬けロボットを発見!

「そうか……私は北へ行け、という指示しか出していなかったな」

「北へ行け」という命令に従えば、やがて北極点で身動きができなくなるだろうことに博士は気が付いた。北極点より北などないのだから。

秘密のロボットも回収されてしまい、博士は地団駄を踏むしかなかった。

Fin.

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