monologue : Same Old Story.

Same Old Story

天体観測

私は、愛用の望遠鏡を持ってベランダに出た。軽く調整をしてレンズを覗くと、いくつかの星が輝いて見えた。

肉眼で見えないものが観たかった。気が遠くなるくらい遠くの星を。だから望遠鏡を覗いた。

ブランデーの栓を開けた。グラスの半分まで注ぎ、右手に持つ。

「遠いから見えないんじゃないんだ」

父の言葉だ。

「観ようとしないから見えないのさ」

目で見るんじゃない。父はそう言った。

もう一度望遠鏡を覗く。さっきよりも輝いて見える。

あの頃は、父が何を言っているのか全く理解できなかった。今は何となくわかる気がする。

「……あなたは今夜、何を想っていますか?」

空に向かってつぶやく。

「私は、あなたのことを想っています」

見えないものは、案外近くにあるのかも知れない。最近、私はそう思うようになった。

Fin.

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