monologue : Same Old Story.

Same Old Story

会社のために

「ああ、君。ちょっといいかね? 君を見込んでの話があるのだが……」

ついにきたか!……僕はそう思った。先輩から聞かされている話がある。部長が僕を呼び出し、邪魔の入らないところでこんな話をする。

「会社のために死んでくれないか?」

そらきた。後は聞いた通りの話だった。

政治家に金を渡していることがばれた。帳尻合わせのためには誰かが死ななければならない。この遺書と睡眠薬で、自殺を図ってくれ。遺族には悪いようにはしない。

実に簡単で、よくありそうな話だった。そして、当然この話には裏がある。これはテストなのだ。

ここで僕が承諾すれば、会社への忠誠を評価される。もちろん、睡眠薬も裏金の話もでっちあげだ。しかし断れば、出世への道は閉ざされてしまう。僕は了解したと即答した。

後日、出張先で薬を飲むことにした。どうせ偽物だろうけれど、どこかで監視している可能性だってなくはない。二十錠ほど手にとり、一気に飲み込んだ。これで僕の将来は約束された……疲れたのかな? 何だか眠くなってきた。ちょっとひと眠り……。

「部長、うまくいったようです」
「すまないね、いつもいつも」
「こんな話を信じる社員なんてどうせ役に立ちませんから」
「しかし君もよく考えたな。出世欲を利用するとは」

Fin.

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