Same Old Story
暑い日
- Summer Daydream
- http://www.junkwork.net/stories/same/035
「今日も暑いなあ」
そう言って、彼は空を見上げた。この酷暑に肉体労働はなかなかこたえる。しかし、下っ端の労働者には休みなどもらえないだろう。それでも、彼は自分の生活に不満を持ってはいなかった。
「おい、そこ! サボるんじゃない!」
現場監督の声が響く。彼は、また荷物を運び始めることにした。
自分の存在の意義は? そう聞かれて答えられる人間がどれくらいいるだろう?
彼が足元に視線を落とすと、アリが列を作っていた。
はたらきアリ。女王のために必死で働くアリ。彼はまわりを見回した。自分と同じように、額に汗を流して働く人間。アリとどこが違うんだ?
「こら! さっさと働かないか!」
監督が怒鳴る。変な考えは捨てて、仕事に戻ろう。
「あいつら、またやってるぜ」
「女王もいないのに、何のために働くんだ? つまらない生き物だ」
小さなアリの声が、大きく響いたように聞こえた。
Fin.