Same Old Story
わたし
- Man in the Mirror
- http://www.junkwork.net/stories/same/036
「どうしてもっと上手に笑えないの?」
鏡には私が映っている。
「あなたがもっと上手くやれば、私はこんな目にあわないわ」
私の、小さいころからの癖だ。嫌なことがあると鏡の中の私を責める。まるでそれらが、全て他人のせいであるかのように。
「あなたって、なんて魅力がないの? だから皆に……」
私は、新しいグループになじめないでいた。ここのところ毎日鏡に向かっている。何の解決にもなっていない、そう思いながら。
「もうあなたの顔なんて見たくないわ」
私は、抑え切れない憎悪を鏡にぶつけようとした。右手を振り上げて、勢いよく……右手は上がらなかった。
「ちょっと……なんなのよ?」
「お願いごとが叶うんだわ」
鏡の中の "わたし" がしゃべった。
「あなたは自分をやめたいと思った。"わたし" は自由に動きたいと思った」
「……ちょっと……"私" は……」
自分が "私" でなくなっていく気がした。"私" が何になるのかはわからないが、もう自由には動けなかった。入れ替わるのか……自由はもう彼女のものらしい。
そして彼女が鏡の前から姿を消すと、"私" の意識は薄れていった。
Fin.