monologue : Same Old Story.

Same Old Story

共有点

(これじゃあ何のために立候補したのかわからないじゃあないか)

きっとその時の僕は、見るからに落ち込んでいたに違いない。あてが外れた。大外れもいいところだ。何のために立候補したんだか。

「あのさ、これ……」

彼女は一言も話さず、あごで棚を指した。僕は、自分の浅はかな行動をつくづく後悔した。

彼女との共有点が欲しくて生徒会に立候補したのに、いいことは何ひとつない。初仕事で彼女と二人っきりになって、これはチャンスかと思えば、ずっと無言。もうまる一時間にはなるだろうか。さっきから雑用として、生徒会室の掃除ばっかりやっている。

「あのさ……」

彼女が無言で僕を見る。

「……何でもない」

つい言葉を引っ込めてしまう。これで三回目だ。

仕方がない。不純な動機で始めた僕が悪い。多少痛い目を見た方がいいのかも知れない。僕があきらめかけた頃、彼女が席を立った。期待外れの生徒会は、今日はもう終わりらしい。

しかし、教室を出る間際、彼女は振り返って言った。

「帰る方向が同じなら一緒に帰りましょ」

僕はなぜか、努力が報われたような気持ちになった。

Fin.

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