Same Old Story
代替物
- Substitute
- http://www.junkwork.net/stories/same/051
「別れましょう」
突然、彼女が僕にそう言った。何の前触れもなく。
「どうしてだよ。僕らはうまくいってたじゃないか」
「あなたと付き合うのがもう重荷でしかないわ」
彼女は僕の目を見なかった。
「ごめんなさい」
「…………」
視線を地面に落としたまま彼女は僕に詫びた。
「何か理由があるのかい?」
すぐには答えは返ってこなかった。しばらくの沈黙を、衝撃的な言葉が打ち破った。
「あなたはあの人の代わりにはならなかったわ」
彼女はそれだけ言うと、僕を見ずに立ち去った。
「……代わり、か」
僕は、彼女に告げずにおいた言葉をつぶやいた。
「君だって同じさ」
視線を地面に落としたまま、僕は小さくつぶやいた。
「あの子の代わりにはならなかった。お互い様さ」
Fin.