monologue : Same Old Story.

Same Old Story

機密書類

「くそっ……!」

やつらめ、必死になって追いかけてきやがる。無理もないだろう、この書類が外部に漏れれば、やつらは一巻の終わりなのだから。

俺は国際的なスパイ。今回は政府の依頼で、ある企業の書類を盗み出した。そう、やつらの大犯罪の証拠を盗んだのだ。何の変哲もないごく普通のうすっぺらい書類だが、やつらにとっては何ものにもかえがたいのだろう。

角を曲がり、地面を力強く蹴る。大腿筋が収縮し、そして完全に伸び切る。まるで 100m 走ランナーのように走る。もうすぐやつらも俺が見えなくなるはずだ。

もうひとつ角を曲がり、やつらを完全に引き離す……つもりだった。

「……! しまった!」

角を曲がったところには、やつらの仲間が待ち伏せしていた。

「残念だったな」

やつらは奇妙な銃を取り出し、それを俺めがけて……

……あれ? 僕は居眠りでもしていたのか?

いつもの会社のいつものオフィスで、僕は目を覚ました。……いつもの? 頭がぼんやりしている。いつものオフィス、のはずだ。

立ち上がったひょうしに、机の上の書類が、何の音も立てずに床に落ちた。何の変哲もない、ごく普通のうすっぺらい書類が。

Fin.

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