monologue : Same Old Story.

Same Old Story

戦場の断罪者

一人の男が、町外れの瓦礫にうなだれて座っていた。一丁の小銃と緑の軍服、腕にはカギのついた十字の腕章を付けていた。

「もう何もない。愛すべき国も、愛する家族も……」

彼の国は戦争に負けた。恐らく彼も捕虜にとられる運命だっただろう。

その彼のもとに、一人の少女が歩み寄って行った。彼は、少女の顔を見上げて言った。

「君も家族をなくしたのかい?」

少女は黙って首を振った。どちらの意味だったのか、彼には読み取ることはできなかった。

「少しの幸せだけでよかったんだ。きっと戦わなくてもよかったんだ」

少女は黙ったままだった。

「戦わなくても幸せになれたはずなんだ」

彼は少女に微笑みかけ、ゆっくりと立ち上がった。

「きっと今からでも、まだ間に合うような気がしてきたよ。君は……」

彼がそうつぶやいた瞬間、少女は手に隠し持っていたナイフで男の胸を突いた。

「……! 君は……そうか、僕は……僕たちは……君の……」

血は溢れ出して止まらなかった。

「……すまなかった」

少女は何も答えなかった。ただ、もう動かなくなった男を、涙目のままでみつめていた。

Fin.

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