Same Old Story
戦場の断罪者
- Punishment in War
- http://www.junkwork.net/stories/same/059
一人の男が、町外れの瓦礫にうなだれて座っていた。一丁の小銃と緑の軍服、腕にはカギのついた十字の腕章を付けていた。
「もう何もない。愛すべき国も、愛する家族も……」
彼の国は戦争に負けた。恐らく彼も捕虜にとられる運命だっただろう。
その彼のもとに、一人の少女が歩み寄って行った。彼は、少女の顔を見上げて言った。
「君も家族をなくしたのかい?」
少女は黙って首を振った。どちらの意味だったのか、彼には読み取ることはできなかった。
「少しの幸せだけでよかったんだ。きっと戦わなくてもよかったんだ」
少女は黙ったままだった。
「戦わなくても幸せになれたはずなんだ」
彼は少女に微笑みかけ、ゆっくりと立ち上がった。
「きっと今からでも、まだ間に合うような気がしてきたよ。君は……」
彼がそうつぶやいた瞬間、少女は手に隠し持っていたナイフで男の胸を突いた。
「……! 君は……そうか、僕は……僕たちは……君の……」
血は溢れ出して止まらなかった。
「……すまなかった」
少女は何も答えなかった。ただ、もう動かなくなった男を、涙目のままでみつめていた。
Fin.