monologue : Same Old Story.

Same Old Story

電車の中の二人

「"違う" って言わないんだ?」

彼女はうつむいたまま、つぶやくように言った。電車が速度を落とす。駅が近いことを示している。

近いのは駅だけか? 終わるのはこの気まずい空気だけか?

「……何も言わないんだね」

うつむいたままの彼女が、うつむいたままの僕に言った。彼女の表情は読み取れない。綺麗な黒髪に隠れて、僕の推察すら拒んでいるようだった。

泣いているのか? 彼女が?

僕がか?

扉が開く。

「私、ここだから」

彼女は歩き出した。

「じゃあね」

振り返ってそう言うと、彼女は僕を見つめた。まだ何か言いたそうだったが、彼女はそのまま電車を降りた。そして、今度は振り返ることなく歩き出した。

閉まる扉が、二人のつながりを断ち切るように見えた。

Fin.

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