Same Old Story
とめどない雨
- Endless Rain
- http://www.junkwork.net/stories/same/063
「ひどい……!」
口元を右手で押さえ、彼女は部屋を飛び出した。僕は、煙草に火をつけた。
(悪役)
そんな言葉が、ふいに頭に浮かんだ。"悪者" ではなく、"悪役" 。僕の人生を一言で表す言葉かも知れない。
(道化師とどっちがマシだろう)
意味のないことばかり頭に浮かぶ。ショックなんて言葉で言い表すのも安っぽい気がした。雨の音がする。
(そろそろ参上したかな)
煙草の煙を吐き、窓の外に目をやった。雨の中彼女が立ちすくみ、それに傘をかざす男がいた。そして二言三言交わす仕草の後、二人は強く抱き合った。
僕はカーテンを閉めた。
(……うまくいってよかった)
煙草を灰皿に押し付ける。
(……ちくしょう……!)
胸は痛みっぱなしだった。後悔と自責の念で、今にも張り裂けそうだった。
雨は、しばらく止みそうになかった。
Fin.