monologue : Same Old Story.

Same Old Story

デジタル

『最近会ってないけど元気かしら?』

「……何だこれ?」

メールの送信者は僕の恋人だった。

『僕は元気だけど』
『なにか意味ありげな言い回しじゃない?』

僕はモニターの横に立てた写真を見た。笑顔の彼女の写真。

『なにかあったの?』

続けてメールが入ってくる。彼女はいったい……?

『あったよ』
『何があったの?』
『聞きたいかい?』
『あなたのことなら、なんでも知りたいわ』
『僕のことじゃない』
『じゃあ誰のことなの?』

僕はため息をついた。写真の彼女を見てから、もう一度モニターをにらみつけた。

『二時間前に、君の……君が死んだって報せを聞いた』
『私が死んだって?』
『事故で、即死だって聞いた』
『そんなの誰かのイタズラに決まってるわ』
『僕はつい今しがた、君の遺体を確認した』

彼女からの返事はしばらく来なかった。

『君は誰なんだ? なぜ彼女の名前を使う?』
『私は生きてるわ』
『いや、君は』

その瞬間、モニターにノイズがはしり、直後に画面は白一色に変わってしまった。そして僕の意識も……

ふと気がつくと、僕はモニターの前にいた。

「……いつからパソコンいじってたっけ?」

なぜだか頭がはっきりしていない。パソコンの画面には何も映っていない。

「パソコンで何をしてたんだっけ?」

誰かとメールのやりとりでもしてたような……でも、誰と?

モニターから目をそらせて、隣の写真立てに目をうつした。その写真立ての中には、誰もいない風景写真が入れてあった。

Fin.

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