monologue : Same Old Story.

Same Old Story

返品

「クリスマスだってのについてないわ」
「仕方ないよ、売る側だって悪気があってのことじゃないし」

彼女はむくれたままで歩き続けた。

「それにクリスマスはもう終わったんだし」

なんのことはない、ただの不良品だ。彼女が僕にくれたプレゼントの指輪が箱の中で二つに割れていた。彼女をなだめるうちに、郵送の最中に不手際があったのだろうということになった。そして今、指輪を買った百貨店に文句を言いに行くところなのだ。

「一応交換してくれるだろうから、ね?」
「そうじゃなくて!」

彼女が声を張り上げて言った。

「クリスマスだから!クリスマスだから意味があったと思わない!? せっかくの……」
「まあまあ……」

一晩過ぎてもこれだ。昨晩が営業時間外でなかったら大変なことになっていただろう。

百貨店に着いた。彼女は駆け足で店員に近寄り、矢継ぎ早にまくしたてた。割れた指輪を指さして何度も言う。

「申し訳ございません、交換いたします」

店員は平謝りだった。

「交換じゃなくて返品でいいわ。それに GH02 もあまり良くなかったから返品するわ」

(……? 何のことだ?)

そのとき僕の首すじに誰かの手が伸び、何かをひねった。テレビの切れるような音が聞こえたと思った瞬間、僕は全身の力が抜けて倒れた。

店の奥にセール用の旗が見えた。

" 新機種恋愛型アンドロイド GH02 セール "

最後に、彼女が店員にグチるのが聞こえた。

「だって、クリスマスなのにロマンチストじゃないんだもの」

Fin.

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