monologue : Same Old Story.

Same Old Story

報告

小さな頃に良く遊んだ相手だった。初恋の理由なんてそんなもので十分なのだ。

七年ぶりに会った彼は相変わらずだった。高校を卒業した頃と何ひとつ変わらない姿で、私の恋人だった頃と何ひとつ変わらない仕草だった。

「故郷を飛び出して七年間、一度も帰らないなんて随分と薄情じゃないか」

重いセリフをさらっと言ってのける彼。

「あまり好きじゃないのよ、ここの空気。海から遠いのも好きじゃないわ」

その彼の言葉を受け流す私。三年近く付き合った間に養われた感覚なのだろう。七年越しでも衰えてはいなかった。

「……結婚するんだって?」

少しの沈黙の後に彼がつぶやいた。私は、心の底からの作り笑顔で応えた。

「その報告の帰郷よ。そうでもなきゃこんなところ、帰ってきやしないわ」
「また急な話なんだな。式を済ませたらすぐ旅行で、もう向こうに戻るのかい?」
「ええ。あなたより二年も遅れをとってるんだもの」

皮肉まじりのつもりだったが、彼には伝わらなかったらしい。

「ああ、俺もすっかり父親だよ。二人も抱えて……歳とったな、俺たち」
「そうね、随分歳をとったわ。比例するほど後悔もしてるわ」

ため息まじりに、ようやく私は本音を吐いた。後悔しても戻らない時間と、戻らない心。

彼と、彼への気持ちに別れを告げて、また私は歩き出した。

Fin.

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