monologue : Same Old Story.

Same Old Story

完全犯罪

「……!」

男の顔がゆがみ、手にしたフォークを床に落とした。

「あら、どうかしたのかしら?」

男の向かいに座った女が、いたずらっこのような顔で尋ねた。もちろん、彼女は理由を知っているのだが。

「ぐ……!」
「苦しいの? 当たり前よね、毒なんか食べたら苦しいわよ」

男は椅子から落ち、床をのたうちまわった。そして女は、それを見守るだけだった。

「……私が手料理を作るなんて不自然だと思わなかった?」

そう言って女は、自分の皿を流しに運んだ。

「知ってたのよ、私を捨てようとしたこと」
「く……」
「言葉にならないの? 意外と効くのね、じゃがいもの毒も」

男が引きつった表情で女を見る。

「芽をつまなかった、ただそれだけなのよ。独身男性、自宅で食中毒死、って記事になるでしょうね」
「完……全……犯罪の、つもり……か」
「事実そうでしょう」
「……何も……言ってなけ……れば……ね」

男がポケットから携帯電話を取り出した。液晶画面には、"通話時間 45 秒" という文字が表示されていた。

「……誰かに知らせたわね!」

女は途端に青ざめて、ものすごい勢いで部屋を飛び出していった。男はあお向けになり、息も切れ切れにつぶやいた。

「完全……犯罪なんて、するものじゃ……。一生、罪の意識と……そう……僕のように……」

天井を見つめていた目を閉じ、もう一度男はつぶやいた。

「あのときの……僕と同じ……手口……皮肉……だね……」

電話で知らせた彼らが来るまで数分、何とか生きて罪を償おう。男は、心の中でそうつぶやいた。

Fin.

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