monologue : Same Old Story.

Same Old Story

つくりもの

今にも泣き出しそうな空の下、空と同じような、泣き出しそうな表情で彼女が言った。

「もう会えないの?」

うるんだ目が、責めるように僕を見る。僕は、一番言いたくない言葉を言わなければならなかった。

「……これっきりだ。もう君とは、一切何の関係もない」

彼女は口元を押さえてうつむき、すぐに振り向いて走り去った。僕は、曇り空の下でうなだれるだけだった。

「カット! OK です!」

監督の言葉が響いた。

「良かったよ今の表情! 最高のラストだ!」

当たり前の演技をべた褒めする監督。僕は、主演女優 - 彼女の方へ歩み寄った。

「その……お疲れさま」
「あら、わざわざご丁寧にありがとう」

演技中と違い、彼女はそっけない表情で答える。

「良かったら、今から食事でもどう?」
「ごめんなさい、先約があるの。それに」
「それに?」
「役づくりの延長での恋愛ごっこなんかしたくないでしょう?」
「……それもそうだね」

先を見越されたような発言だった。僕はなぜか納得したような返事だけを返して、歩き去る彼女を見送った。

「公私混同かな」

軽く頬を叩く。

「演技でもあんなこと言わなければ良かった……なんて」

つくりものの空の下、つくりものの性格の僕がつぶやいた。ただ僕の気持ちだけが「つくりものじゃない」と叫んでいた。

……そんな気もした。

Fin.

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